メディカルイラストレーターとは
医療をビジュアル面で支える仕事
幅広くイラストを手掛けるイラストレーターと違い、医療に特化したイラストを描くのがメディカルイラストレーターです。 メディカルイラストレーターには、医学書に掲載されるリアルなイラストから子供が対象のものまで、目的に合わせてイラストの表現方法を変える必要があります。解剖図といった緻密なものを描くこともあるので、イラスト技術だけでなく、医学についての知識も求められます。ただ、医療の専門知識を求められるので日本では、まだまだ少ないのが現状ですが、学会で論文発表の資料として必要とする医師や医薬品・医療器メーカーの取扱説明書、医師を育てる教育機関、スポーツ医学など医療分野に携わる業界からメディカルイラストレーターへの需要は高まってきています。メディカルイラストによって医療や医学の知識を正確に伝え、理解を深めてもらうことがこの仕事のやりがいであり、メディカルイラストが果たす役割は大きいと言えるでしょう。
どんな仕事?
高度な分野だからこそ分かりやすく伝える
医療・医学関連書籍や論文などにおいて、臓器、骨格、血管、神経、医療機器の取扱説明書など、イラストで分かりやすく正確に伝えるのがメディカルイラストレーターの仕事です。文字だけでは伝えきれない複雑で高度な医学を視覚的に分かりやすく伝えるメディカルイラストレーターは医学の発展においても大きな役割を担っています。
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POINT01
オリエンテーション
クライアントや編集者と打ち合わせて、イラストの目的やイメージ、想定ターゲット、納期などを話し合い確定します。相手の要望を理解し、必要に応じて最適なイラストを提案する柔軟性が求められます。
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POINT02
情報収集
イラストを描くためには、対象物の理解を深めなければなりません。臨床資料や解剖書といった文献を調べ正確な情報を収集します。
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POINT03
ラフ作成
ラフを制作してイメージに認識の違いがないかをすり合わせます。イメージ通りであればそのまま清書に進み、修正点があればクライアントからのフィードバックを反映して修正版を仕上げます。
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POINT04
清書・着色
ラフ画を元に、清書していきます。色付けによって奥行きを出すために深部を暗く、表層部は明るくするなどの調整を入れていきます。必要に応じて影を入れたり、線の強弱を加えたり、ハイライトや文字を入れ完成させます。
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POINT05
納品
完成したイラストを納品します。指定されたデータ形式で保存し、メールで送信するケースが大半です。しかし、イラストの枚数が多い場合や、データ容量が膨大になった場合は、CD-ROMなどにデータを保存して郵送することがあります。
どうすればなれる?
メディカルイラストレーターへの道のり
手描きだけではなく、インフォグラフィック、CG、アニメーションと目的に合わせて表現方法を変える必要があり、同時に医療の正しい知識も必要不可欠です。イラストが描けるということは大前提になるので、イラストの基礎やCGの知識を学ぶことは当然ながら、それに加え医療分野の知識も習得できる専門学校や大学を選ぶことがメディカルイラストレーターへの近道となるでしょう。在学中にメディカルイラストのポートフォリオを数多く手がけ、医療機器メーカーや医療関連書籍を扱う出版社などへの就職を目指します。そこで経験や実績を積み、医師との人脈を築き、フリーのメディカルイラストレーターになることも夢ではありません。
求められる知識・資質を磨く
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POINT01
デッサン力
人の身体に備わる骨格、筋肉、内臓、血管、細胞などを描くとき、全ての絵の基礎となるのがデッサンです。遠近、立体感を表現する手法や三次元的な空間把握と人体描写への理解を深め、モノを正確に捉える力はデッサン力を養うことで磨かれます。
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POINT02
医学の知識
どんなに上手にイラストを描いても、医学的見識に間違いがあっては絶対になりません。また、どこを強調したいのかによって、いらないものをあえて描かないということも必要になります。その判断も医療の知識があるからこその取捨選択といえます。
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POINT03
忍耐力
編集者からは更なる改案がなされたり、医師から医学の最新知見による修正が入ったりと、内容がブラッシュアップされることもあり、修正の繰り返しで忍耐力が試されます。
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POINT04
コミュニケーション能力
時には手術現場の立ち合いや医師・研究者とのやり取りなど、正しい情報を得るための専門家とのコミュニケーションは欠かせません。
必要な資格・試験情報
資格は必須ではありませんが、「Illustrator®クリエイター能力認定試験」や「Photoshop®クリエイター能力試験」など、資格を取得していることで企業やクライアントに対して知識やスキルを客観的に証明することができます。また、「CGクリエイター検定」や「色彩検定」があると、表現の幅を広げる上で役に立つでしょう。メディカルイラストレーターは、資料や解剖書で対象物を調べ、理解を深めなければなりません。仕事に就いてからも、学び続ける努力と正確な情報を調べる根気強さが必要です。