アニメ仕上げとは
色の効果で作品を底上げする役割
アニメーターが作成した線画に色を入れてアニメ作品へと仕上げていく人を「仕上げ」や「彩色スタッフ」と呼びます。無数にある色の中からシーンに合う適切な色を選び、作品の世界観を創り上げます。使う色によってアニメやキャラクターの雰囲気が左右されるため、監督が意図する作品のイメージ、キャラクターの心情を理解することがとても重要になります。色によってアニメ全体のイメージを変えてしまうので大きな責任を担う仕事ではありますがその分、やりがいを感じられる仕事でもあります。仕上げ担当として自分が手掛けたアニメが多くの人に評価され、感動を与えられた時には、チームで成し遂げた達成感や喜びを実感できるでしょう。
どんな仕事?
アニメの世界観を色で表現する
時間帯や天候、シーンやキャラクターの状態など、アニメの展開に応じて色指定を行い彩色していくのが、仕上げの仕事です。かつてセル画でアニメ制作が行われていた時代は、トレスマシンという機械で動画の線をセルと呼ばれる透明なシートに写し取り、専用の塗料で彩色していましたが、今ではデジタルでの作業に移行しています。スキャナを使って動画をデータ化して、「RETAS STUDIO(旧RETAS! PRO)」などの専用ソフトを用いてパソコン上で彩色していく形になっています。
仕上げの仕事は、大きく「色彩設計」「色指定」「ペインター」に分けられますが、学校卒業後はまずペインターとしてスタートし、彩色技術を磨いていきます。そして、色指定、色彩設計へと昇格していくのが一般的です。それでは、それぞれの仕事内容について見ていきましょう。
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POINT01
色彩設計
色彩設計はアニメ作品全体の色を統括する責任者です。監督の意図をよく理解した上で、子ども向けアニメであれば明るく鮮やかな色合いにして、ミステリーや戦争ものアニメであればシックな色合いにするなど、アニメの雰囲気やストーリーに合わせて色彩の方向性を決めていきます。
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POINT02
色指定
色指定は、色彩設計が定めた色データを元に、各話のシーン(天候、時間、キャラクターの心情)に適切な色を指定していきます。また、ペインターが塗ったデータに問題がないかのチェックを行うのも色指定の大切な仕事です。別名「セル検」とも呼ばれ、修正指示を出し作品の完成度を上げていきます。
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POINT03
ペインター
ペインターはアニメーターの描いた線画をスキャンしてデータ化しグラフィックソフトに取り込み、色指定が決定した配色を専用ソフトを用いて実際に彩色する仕事です。仕事を通してアニメにおける色の役割や配色のルールなどを学び、色指定や色彩設計に必要な知識やスキルを磨いていきます。
どうすればなれる?
アニメ仕上げへの道のり
アニメ制作において、色彩は作品のイメージを大きく左右する要素なのでストーリーの世界観に合った色を的確に見極めるスキルが欠かせません。配色バランス、色の効果など専門知識が求められるため、まずはアニメ専門学校などでアニメ制作の工程やデジタルツールのスキルを身につけることが近道でしょう。彩色の仕事は、ペインターから始まり、経験を積むことで色設定、色彩設計へとキャリアアップをしていきます。キャリアアップするにつれ、作品の世界観に深く関わっていくため、やりがいや収入もアップしていきます。アニメ業界では彩色の頂点が色彩設計ではありますが、そのスキルを活かして様々な業界で活躍することも可能です。
求められる知識・資質を磨く
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POINT01
色彩の知識
アニメの世界観を正しく表現するためには、配色バランスや色の効果・役割を的確に選べるスキルが欠かせません。色の表現力を磨くためには、身の回りのものを常に注意深く観察することも大切です。
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POINT02
コミュニケーション能力
仕上げは一人で行う仕事ではなく、多くのスタッフと関わりチームで進めていきます。そのため、仕事をスムーズに進めるためのコミュニケーション力が求められます。
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POINT03
正確性
仕上げや彩色の仕事はアニメ作品のクオリティーに大きく関わるので、正確性が求められます。加えて細かい仕事をやり遂げる忍耐強さも必要です。
必要な資格・試験情報
仕上げになるために必須の資格はありませんが、色彩理論や色彩センスなど、色について総合的な知識を学んでおく必要があるでしょう。「色彩検定」は誰もが「理論に裏付けられた色彩の実践的活用能力」を身につけることができる資格として広く知られています。色に関する専門知識があることを証明できる資格になるので、取得を目指すことで色への理解を深めることができるでしょう。また、「Photoshop®クリエイター能力試験」なども仕事に役立つ資格と言えるでしょう。色のプロフェッショナルである仕上げは、アニメの世界観を左右する重要な仕事です。仕上げとして活躍するためにも、日々の生活の中で常に色に意識を置き、表現力を磨いていく必要があります。また、特殊効果などプラスαの技術を持ち合わせているとアニメ以外のゲーム業界やデザイン分野などでも、活躍の幅を広げることができるでしょう。